幼美つれづれ草 −第23回− 『おもしろそうアンテナ』
2歳になったばかりの息子と近所の散歩道へ出かけた時のこと。
機嫌よく手を繋いで歩いていたかと思うと…急に通り過ぎた道を戻り、何があったのかと思って見ていると…側溝の上の並んだ鉄板を歩き出した息子の姿がありました。場所によってはガタゴトと音が鳴ったり揺れたり、10枚以上並んだ鉄板の道を笑いながら行ったり来たり…。
しばらくすると、次は道の端にある砂利が気になり、座り込みました。そして、排水枡の網が目についたようで、そちらへ行き寝転んで覗き込む。手を入れようとする姿を見て、それはさすがに汚そう…と思う気持ちを飲み込み、「なにかあった?」と聞くと、ニヤニヤと嬉しそうな顔をしていました。そして網目からジャーと砂利を落とし、砂利が水の中へ落ちる音に大笑いし、何度も繰り返していました。
一方園内での先日の出来事です。未就園児の親子が参加できる親子教室を行なったときのこと。自然物を使って遊ぼうと、私達が種類分けをして、好きなものを好きなだけ選んでもらえるよう用意していました。
すると、こちらが声をかける前に、自分のトレーに取り分けることが楽しく何度もその行為を繰り返す子がいたり、空になった容器を見つけてきて砂粒を何度も入れたり出したりして音や感触を試してみる子、またある子は大きな葉をギュッと握ってちぎったかと思うと室内のコーナーにあったライトテーブルに置いてみたりする姿がありました。ものを目の前にすると、すぐに自分の好きなことを見つけ、何やらいろいろな行為を楽しんでいる子ども達。
子どもは、「こうやってみたら?」「こんなものがあるよ」「こんなことになって面白いよ」と教わらなくても、なんとも鋭い『おもしろそうアンテナ』がだれしも備わっていて、触ってみよう、試してみようとし、日常のなんでもない散歩道の中にも、大人には一見なんの意味もないような身の回りにあるものの中にも、おもしろいものを見出し、遊びの素材に変えてしまう力があって、その力は本当に素晴らしいし、そのいきいきした姿を見ていると、心が動きます。
私の目線では、この遊びをするならこんな場所でこんな素材で…と考えてしまうけれど、子ども達には目の前にあるものや事にそれこそ本当に純粋に、直感的に関われる姿があり、まだまだ小さいと思っていた子ども達の中には、「こうしてみたらどうなるだろう」と考える(感じる)力(心)が、しっかり育っていることを感じました。
これまでも、子ども達にとっての遊びや保育環境を柔軟に考えて…と思っていましたが、どこか固まった捉え方をしている自分に気付かされ、物事の見方や可能性をまた改めて教えてもらえた気がします。
子育ての中でも、保育の中でも、こちらが予想しないタイミングや場所や物で「おもしろい!」を見つける子ども達。その目を輝かせて見つめる先を見逃さず、一緒に楽しめる大人でいたいと思いました。
プロフィール
森田 真理子(もりた まりこ)
学校法人今川学園 木の実幼稚園にて15年間の勤務。
担任、主任、教頭を経て1年間の育休に入り、現在はアトリエリスタとして、子どもにとっての「アート」「遊び」「自然」のおもしろさを探求し、園内アトリエと保育室で造形遊びを実践している。
また、子育て支援の場として、未就園児の為の親子教室「コノミナ」を開催し、地域の子ども達の遊びと学びの場をつくることに携わっている。