幼美つれづれ草 −第9回− ~「遊びは続くよ・・・」~


3歳児から上の年齢ばかりだった幼稚園に、子育て支援クラスが出来て、2歳児さんがた
くさんやってくるようになってもう20年ちかくになります。2歳になったばかりの子から3
歳過ぎの子まで、月齢の早い遅いで様々な育ちがありますが、この2歳児クラスの様々な
遊びを見ていると、「遊びの原点・始まり」の姿が見えてきて、本当に面白いのです。

数年前から、この遊びの姿を丁寧に見ていこうという事で、「恩物」の「色板」と「色
棒」を使って、どのように遊びが展開されるか、写真とお話の記録を保育者二人一組で記
録してみる事になりました。その時の記録のひとつを紹介しましょう。

遊びの原点はもてあそびからとも言われますが、どの子も最初は色板や棒を手でモシャ
モシャといじり始めるのですが、そのうち偶然何かの形が目の前に現れると、「あれ?」
という表情になり、何やらつぶやきます。そのつぶやきと生まれた形を保育者は記録して
いきます。子どもはひとつの形が生まれても、それで終わりません。出来た形を崩しては
作り直し、また何かのお話が生まれてきます。記録には限界がありますが、遊びは次々と
続いていきます。

すごいですね、この瞬間、瞬間に生まれる造形とお話・・・。小さな小さな掌の中で、
作っては壊し、作っては壊す中で、その都度面白いイメージとお話が沸き上がる、その瞬
間に保育者は立ち会います。子どもが「はい、おーしまい。」と言うまで、この造形遊び
は続きます。子どもは楽しくて「いいお顔」、保育者も小さな表現が生まれる瞬間、瞬間
に小さな感動を覚え、どちらも自然と「いいお顔」になります。

振り返って私たちは、こうした瞬間、瞬間に生まれる造形とイメージにどれだけ自覚的
でいられるのでしょうか。描く遊びにせよ、作る遊びにせよ、「はーい、おしまい」で生
まれた、その遊びの最後の姿だけしか見ていないのではないか、と思ってしまうのです
。「結果よりもプロセス」とは言うけれど、やはり遊んだ跡しか我々は見ていないのでは
ないか。教育上の評価もそこしか見ていないのではないか、とも言えます。

遊びを大切にしていくという事は、実はその変化、発展していくダイナミックな姿を捉
える工夫が、まず必要なのではと考えます。「絵画」「作品」という視点ではなく、描く
・作る行為とそれに誘発されてイメージが発生する、その生き生きしたプロセスを見てい
きたい、そして、子どもと共に常に面白がれる自分でありたいと、願わずにはいられませ
ん。

プロフィール

今川 公平 プロフィール
1956年生まれ
大阪城南短期大学、聖和大学等で勤務後、1990年から学校法人 今川学園 木の実幼稚園 園長を務めてもう30年になりました。2004年からは大阪教育大学で幼児造形を教えています。
園長就任後、自由活動を重視する保育への転換を始め、20年前からはレッジョ・エミリアにインスパイアされ、日本型のプロジェクト・アプローチの実践を始めました。今は、各クラスで展開される保育が本当に面白くて面白くて・・・という毎日です。
全国幼年美術の会 副会長。

園での様子はインスタグラム konomi_kindergarten でご覧ください。