幼美つれづれ草 −第16回− 体育館に巨大なダンボールテントの出現


ピアノとフルート、クラリネットの生演奏を聴きながら大きな紙に絵を描こう!
そんなイベントを行なった時のこと。
小学校の体育館をお借りしての絵画イベントの為、念入りにシートを敷き準備を行なった。これで子どもたちは描くことに夢中になってくれるだろうと期待に胸を膨らませた。

当日、子どもたちが三々五々体育館に保護者の方々とやってきた。
そして満面の笑顔を浮かべて縦横無尽に走り出した。
いたずら顔してダンボールの隙間に入って隠れだす。
寝転ぶ。転がる。
あっという間に集団かくれんぼが始まった。
音楽と絵画のハーモニーどころではなくなった(笑)

これが子どもだ。
これが本当の欲求だ。

広い体育館が子どもたちを「ねえ、走りたくない?」と誘い
ダンボールの隙間が「ねえねえ、こっちにおいでよ」と招き入れた。
子どもたちに見える景色は刻々と変化する。
そこにはまた子どもを誘う何かが現れる。
なんとも魅力的な世界
おもしろすぎる私たちの世界
私たちの周りから何かがいなくなることはない。

私たちは自ら何かをしようと思うよりも
出会うナニカによって「ねえ、○○しない?」と誘われる。

その誘いに素直に応じ生きていけば
きっと大人が「主体的に生きなさい」とか「することを自分で決めなさい」なんて言わなくても行為を自ら決め、大人になっていくのかもしれない。

そんな世界をつくってみたい。
まずは大人自身が主体となれるスペースをつくる。
スペースとは自分で考え、試すことができる時間や社会のこと。

大人にスペースができれば
子ども自身で考え、試すことのできるスペースを自然とつくるようになる。
そうすれば世界がやさしくなると私は思う。

四條畷学園短期大学
香月 欣浩

プロフィール

香月 欣浩(かつき よしひろ)

四條畷学園短期大学 保育学科教授(造形表現)
2010年NHK Eテレ「すくすく子育て」すくすくアイデア大賞で優秀賞受賞。
2014年NHK Eテレ「いないいないばあっ!」造形の監修・指導
子どもの感性を磨くアート教室やイベントを多数企画・運営
「ムッシュのキッズアート研究所」代表 HP(http://kidsart-labo.com )
■著書
1.感性をひらく表現遊び 実習に役立つ活動例と指導案・表現活動(共著/北大路書房)
2.造形のじかん~感性を育む子どもの造形指導~(共著/愛智出版)
3.新幼児と保育 MOOK「子どもとアート」(共著/小学館)