幼美つれづれ草 −第5回− オンラインでの新たな気づき
新型コロナウィルスにより、保育現場でも様々な困難を抱え、また先生方による様々な工夫がなされていることだと思います。私が所属する大学でも授業をオンライン・対面の両面から行うなど、学生・教員ともに苦労しながらの日々です。
そうしたなか、ゼミにおける造形実践についても、大きな変化がありました。これまでは「木育(子どもをはじめとするすべての人が“木とふれあい、木に学び、木と生きる”取り組み)」教材を中心に、様々な園で木育ワークショップを行ってきました。しかし、対面による実践活動の見直しを余儀なくされ、急遽オンラインによる「木育」教材を計画・検討することになりました。オンラインで行う場合、木の手触りや香りなどを体験することが難しく、現在も迷走しながら実践活動を検討している状態です。
ただ、今まで「木育」ワークショップを行うことにより、ひたすら教材研究を必死に行ってきた学生たちでしたが、オンラインを取り入れることにより意識が少し変わってきたように思います。
保育における「つくる」ことの大切さを共有していることに変わりはないのですが、「つくる」までの導入をしっかりと伝えることの大切さを意識するようになっているのです。
例えば、子どもたちと「木育」について考えるとき、「木とは何だろう?」「木は生活とどのように結びついているのだろう?」「木と環境の問題とは?」など、子どもたちに木を使ってつくる楽しさを伝えるだけでなく、木に学び、木と生きることをどのように伝えたらよいのかをしっかり考えていることです。
現在、朝の連続テレビ小説でも森林組合の活動を通して木の大切さに触れていることが学生の間で話題になっており、学生たちはその部分に着目しながら番組をみて、様々なことを学んでいるようです。
このように学生たちは、「木育」教材について再検討を行いながら、前向きに頑張ってくれています。ぜひ、園の先生方も人込みを避けながら外に出て自然とふれあい、そして園庭や近くの神社や森などに足を延ばし、身近な木々と対話してみてください。子どもたちと活動を共にするための新たな発見が見つかるかもしれません。
最後に、「木育」教材として制作した「ワクワク木育キャラバン」の1動画(※)を紹介しておきます。この動画で使用している読み聞かせ絵本は、京女を卒業した新海風花さんが「木育」をテーマに制作した絵本です。この絵本を通じて、先生方に「木育」のよさが少しでも伝わればと願っております。
※本動画は、令和3年度科学研究費 基盤(C) 研究課題(課題番号:19K02821)「幼小連携のための保育・教育実践における木育教材の開発」(研究代表者:矢野真,分担者:田爪宏二,吉津晶子)の補助を受けて制作されています。
プロフィール
矢野 真 (やの まこと)
1967年 東京都葛飾区生まれ
1993年 東京藝術大学大学院美術研究科 修了
京都女子大学 発達教育学部 児童学科 教授。 一陽会会員。日本美術家連盟会員。
東京藝大で7年間(1994~2001)の非常勤の後、星野学園(2001~2003)教諭、鎌倉女子大学(2003~2009)専任講師、准教授を経て現職。専門は、立体を中心に一陽会に出品(1994年 青麦賞、1998年 会友賞、2002年 損保ジャパン美術財団奨励賞、2015年 会員賞)。2003年 第7回新生展・新生賞、2004年 第23回損保ジャパン美術財団選抜奨励展・新作優秀賞、2015京展・市長賞。2012年 21世紀空間思考展(日本橋三越本店6階アートスクエア)<~2015年まで毎年出品>や2017年 星空の風景-矢野真展(高島屋大阪店 ギャラリーNEXT)など企画による個展・グループ展など多数の作品発表を行う。同時に、教員・保育者養成大学勤務の中、子どもの技法材料等の教材研究を行い、「木育」を中心とした幼児の造形活動を実践・研究している。
主な著作:『保育に役立つ0・1・2歳の手作りおもちゃ』単著(成美堂出版)、『DVDでわかる!乳幼児の造形』共著(サクラクレパス出版部)、『感性をひらいて保育力アップ!「表現」エクササイズ&なるほど基礎知識』共著(明治図書)、『シリーズ知のゆりかご 子どもの姿からはじめる領域・表現』共著(株みらい) 他。