幼美つれづれ草 −第8回− えあそびしようよ・・・ 表現の芽生えを育むために


手のひらにいろんな色の絵の具をつけて、パンパンパンと画用紙をたたきます。足のうらにもいろんな色の絵の具をつけて、画用紙の上でジャンプしたりおどったりします。すると、あっという間に画用紙一面にカラフルな世界があらわれます。手と足の動いた跡が画用紙に残ります。それだけのなげかけです、あとは子どもが決めます。すぐに飛びつく子もいますが、しばらく様子をみてから始める子もいます。おそるおそる人差し指の先端にちょっとだけ絵の具をつけて画用紙に小さな指の跡をつける子もいます。中にはみんなが終わりかけるころゆっくりとりかかる子もいます。その日はみんなの楽しんでいるようすを見ているだけの子もいます。お絵描き活動の後には必ず作品があるという思い込みを捨てましょう。「えあそび」は描く子もいれば、見ているだけの子もいていいのです。いっしょに活動の輪に入っていることが大切なのです。描きたくない子は描かなくてもいいという活動を私はいろんなところでもう何年もやっています。でも描かないままで終わった子に今までに出会ったことがありません。一人一人の「描きたい」という気持ちの芽生えを信じて待ちます。無理に描かせるのでなく、子ども自らが描き始めるのを信じて待ちます。それが表現の芽生えを育むということなのだと思います。これは「えあそび」だけではないです。這い這いから立って歩く、言葉を発する、それらはみんな自然にそうなっていくものなのです。
アブラナがアブラナの中でささえあって成長するように人間は人間の中でささえあって成長していきます。いっしょにいること。
それが大切なのです。だから教えるけれどおしつけない、繰り返しやってみせるけれど結果をあせらない、そのままを温かな眼差しで見守りつづけること、ただ信じて待つ、それだけなのです。

プロフィール

黄瀬 重義(きせ しげよし)1981年より小学校教師、滋賀大学付属小学校を経て2008年より、公益社団法人甲賀・湖南人権センター「あすぱる甲賀」に勤務。現在は、湖南市総務部人権擁護課に在籍。
福祉と人権のまちづくりについて自由に語る場「かふか夢塾」代表。
滋賀幼年美術の会 会長。
全国幼年美術の会 副会長。
ライフワークは美術活動。
最近では一日一点その日の心の赴くままに絵(「宙画/そらえ」)を描き、FB(Shigeyoshi Kise)にアップしている。