幼美つれづれ草 −第3回− ~「予想外にこそ・・・」~


万物が蘇る春です。世間ではコロナ禍の話題一色ですが、幼稚園での子どもたちの遊びの活力と熱量は、なんらいつもと変わるところがありません。二か月遅れで始まったこの学年でしたが、この一年間、大人の心配をよそに子どもたちはいつもと同じように遊びを見つけ、友達や保育者と話し合い、語り合い、楽しさいっぱいの表情で次々に遊びを広げてきました。

園庭でみつけたどんぐりの帽子から、どんぐりのお家を探す遊びになり、園庭のあちこちに小さな穴を掘りだした三歳児さんの夢中な姿。「虹の向こうに」の歌から虹を見つけるために水、絵の具、シャボン玉で実験し、絵本「にじいろのさかな」に出会い、ファンタジーを広げ、真剣に海の世界まで語り合うようになった四歳児さん。園庭の畑で6月に収穫したナタネの種から「種ってなんなん?」と探求が始まり、栽培の実験の過程で様々な土やカビにも出会い、失敗や実験を繰り返した果てに偶然スイカとメロンの交配が起こり、スイカとメロンが合体した「スイメロ」(子どもたちの造語です。)を発見!!! 文字通り合体する事の面白さを知った5歳児さんは形や色、言葉、記号の合体遊びにまで広げていったのでした。

いったい誰が「どんぐりの帽子」が「穴掘り」へ、「虹」が「海」へ、「種」から「合体遊び」への発展と展開を予想したでしょうか。本来、遊びや表現は結果や展開は予測不可能なもの。特に子どもの興味・関心を出発点に、子どもと話し合いながら保育を進めるプロジェクト型保育の中では、本当の幼児の遊びのダイナミズム、だいご味が見えてきます。「過程」と「遊びこむ行為」そのものが圧倒的に面白くなり、そしてその中で子どもも保育者もどんどん生き生きしていくのです。

指導案の「予想される幼児の姿」の記述が空しくなるような、こんな遊びのリアリティを体験すると、この仕事は楽しくてやめられません。同じものを用意し、同じ結果になるように、なんでも先回りして指導する想定内の保育なんて、実につまりません。
遊びは試すことそのもの、「予想外」の活動や遊びを子どもと保育者が一緒に面白がれるかどうかが、鍵になるのです。言い換えると、我々の受け止める力、構え方そのものがいつも問われているのです。

そんなことを、改めて実感する今日この頃です。

プロフィール

今川 公平 プロフィール
1956年生まれ
大阪城南短期大学、聖和大学等で勤務後、1990年から学校法人 今川学園 木の実幼稚園 園長を務めてもう30年になりました。2004年からは大阪教育大学で幼児造形を教えています。
園長就任後、自由活動を重視する保育への転換を始め、20年前からはレッジョ・エミリアにインスパイアされ、日本型のプロジェクト・アプローチの実践を始めました。今は、各クラスで展開される保育が本当に面白くて面白くて・・・という毎日です。
全国幼年美術の会 副会長。

園での様子はインスタグラム konomi_kindergarten でご覧ください。